私がその生きる姿勢を敬う役者、坂東玉三郎。
男性なのに化粧をし着物をまとえば女性をはるかに凌ぐ艶っぽさを醸し出す女形の天才。
スーツ姿は優男に見えますが、素顔の本質を覗かせる言動には深い男気を感じます。
見かけは女でも中身は男といっても今流行りのニューハーフとは大きく違いますよ(笑)
男性に媚びるような仕草や上目使いなどしません。
小指を立てたり、お尻を振りながらナヨナヨ歩きません。
美しい女性を目の敵にもしません。
人や場面によって女言葉と男言葉を使い分けるようなこともしません。
玉三郎の一挙手一投足が美しい。
凛とした軸と線のしなやかさがあります。
なぜ中年男性があのように美しい女性に変身できるのでしょう?
その不思議さに惹かれます。
その玉三郎が心酔している小説家が
泉鏡花です。
皆さんご存じでしょうか?
歴史の時間、ちょこっと名前に聞きいたような覚えがある人が多いかな?
玉三郎曰く
「泉鏡花作品は私にとってなくてはならないものでございます。
まるで、私の思っていることを鏡花先生が書いてくれているような気がいたします。」
多くの鏡花作品が映画化、舞台化されています。
私が名前を知っている名監督だけでも
「滝の白糸」溝口健二監督、1933年
「日本橋」市川昆監督、1956年
「草迷宮」寺山修司監督、1979年
「夜叉ヶ池」篠田正浩監督、1979年
「外科室」「天守物語」坂東玉三郎監督、1992年・1955年
そして今年2012年に
坂東玉三郎演出×泉鏡花作
永遠の美に慄く(おののく)、幻想の三作としてシネマ歌舞伎が上演されました。
1月に天守物語
2月に海神別荘
3月に高野聖
私は「天守物語」と「高野聖」を鑑賞してきました。
そこには私達人間の本質が表現されていました。
恋に対する純粋な心、清く潔い尊さのある者の一方で煩悩や人間社会の矛盾や不条理・人間の傲慢に対しての戒め、、、、、
それを泉鏡花作品は美しく詩のような言葉によって、色や音を想像できるような幻想的な世界を描いています。
鏡花が作り、玉三郎が演じる女主人公は古典的なようで現代女性にも通じているかもしれません。
自己主張をはっきりし、積極的に行動し、他人に依存しない自立性のある女性。
そして更に
妖艶な美しさと共に邪な人間には慄くような魔性の女となります。
それは人間界とは異界の者として登場します。
まさに玉三郎そのもの!
まるで化身のようです!
また玉三郎は美しく紡がれる異空間を演出するために、特に高野聖では舞台公演の収録ではなく、新たに舞台映像にロケーションという映画的手法を凝らして編集していました。
故に、臨場感が出て不気味さが一層増す効果もありました。
坂東玉三郎までも魅了する泉鏡花作品。
現代では、小説は昔の文体が難しく理解しにくいかもしれません。
そこで見て自由に楽しんで解釈できるようにと小説をそれはそれは美しい絵本にした作品や鏡花の書いた色々な女主人公を絵に描いた作品などを含めた展
題して
鏡花のうつくしき女(ひと)
が7月にSagaで開催される予定です。
作品展詳細はまた後日。
Sagaでの幻妖な美の世界を今夏ご期待くださいね(^^)
アート〇美空間Saga