秘めた想い~日本画で紡がれた5つの物語~が
2017年6月2日(金)~11日(日)
11時~18時(最終日17時まで)
に開催されます。
この展覧会は京都市立芸大で日本画を学び、社会に出てからもそれぞれのスタイルで制作を続ける女性作家5人展です。
伝統的日本絵画の流れを汲みながらも、明治期に西洋画と対比させ名付けられた「日本画」は新ジャンルとも言えました。材料や伝統的手法の魅力のみならず、それ以後各時代に生きた作家一人一人が選び取り培った技法からの表現は生の声であり、その無数のバリエーションと集積が現在の「日本画」を形作っています。
彼女達も、日々を送り絵の中で話し、積み重ねていっています。
その絵の端々には密かな楽しみや好奇心、決断や迷いやその理由・・・小さな物語が潜んでいます。
吉岡佐知
大きな絵ばかり描いて大きな世界に立ち向かっている気になっていた20代。もっと「私の心」を大切にした作品を作るべきではと思い始めたのは初個展を終えた30代半ば過ぎ。人との出会い、様々な表現や展示を試す機会に恵れた10年を経て、今「私の心」はもっと軽やかに自由に振る舞いたい、もっと人生を謳歌したいと願い、それを叶える表現を探しています。日本画に制限や段取りやハプニングはつきもの、飛び越えた先の自由を夢見ています。
貴志菜摘
卒業してからは日本画から離れ、中学校や特別支援学校の講師として美術を教えたり、生徒と一緒に学習してきました。そして結婚、出産を経て、現在は重度の障害を持った方々のデイサービスで働きながら2人の子どもを育てています。毎日がバタバタと過ぎていく中で、作品に向う時間はとても充実した時間で「やっぱり日本画は楽しい」と思う事ができました。モデルは可愛い我が子です。この展示で日常の2人の姿を垣間見ていただければ幸いです。
小宮山麻菜
日本画の画材は、それ自体の重さや性質、水などの要因によって、様々に表情を変えます。自然の力によって現れる滲みや罅割れは、謎かけのように美しく、出会ってからずっと魅了されています。こうした偶然に頼った描き方は、主体性や真面目さには欠けるのかも知れません。ですが、私にとって絵は、世界の豊かさ、奥深さに触れるための窓のようなものです。絵具が作り出す思いがけない表情は、そこからみえた不思議の景色です。
寺井寿子
小さい頃、好きで繰り返し読んだ絵本には、ある家族と、かれらの生活と、その暮らしへのひかえめな感動がありました。私の描きたい世界観の原点はそこにあるような気がします。画面に描かれた物事が、穏やかな物語の一場面であるような、前のページがあり次のページに続くような絵画を、岩絵の具の優しい色合いで表現できればと思いながら作品に向かっています。
福井 悠
筆先でぽってりとした膠と岩絵の具に触れると、ふと今自分は鉱物を砕いた小さな地球のかけらを使わせていただいているということを思い出し体がしあわせでいっぱいになることがあります。その力強さと反対に、静かに呼吸をしないと逃してしまうようなこの絵の具の繊細な在り方をそこなわないように、自然の法則にそっと沿うように描いていけるようになればと思います。
神戸では日本画の展示は少なく観る機会があまりありません。
日本画も画風が西洋化されているように見えますが、日本画の材料や描き方など他の絵画とは大きく異なります。在廊作家が描いている様をご覧になって、お気軽にお尋ねになってみてください。
また、小作品や日常に使いやすい小物なども展開されますので、親しめる日本画展としてもお楽しみください。